筋肉の質のお話し その2  Dec/2021


壮年期以降快活に生活を送るには筋肉の「量」だけでなく「質」が大切です。
先ず筋量は筋繊維の太さに比例します。加齢に伴い筋肉が減るとは筋繊維が細くなっている状態を示します。筋肉は絶えず分解と合成を繰り返し存在します。しかし、加齢と共に筋肉の合成力が減退し分解が多く進むと筋量が減少し体が細ってしまいます。筋肉は運動による刺激により合成が促されます。生活の中で強い運動や身体活動が減ると筋肉への刺激が減り筋線維の合成が減ります。同時に加齢と共に中枢神経の中にある神経線維も減少するのです。
その結果、運動をした際に筋肉に伝わる神経刺激も低下し合成量が減ってしまうのです。

        合成力の減少原因
                   出典:日経Gooday10月28日

テストステロン・エストロゲン・成長ホルモンの影響について
筋線維の合成には男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンであるエストロゲン、成長ホルモンが関わります。
テストステロンは筋線維を増強し炎症性サイトカインを抑制します。
  • 炎症性サイトカインはたんぱく質の合成を妨げます。(メタボ体質に発生しやすい)
  • エストロゲンの減少は神経線維量に影響します。
  • 成長ホルモンの減少は、インスリン様成長因子-1〔IGF-1〕の働きを抑制します。
    IGF-1は、「筋サテライト細胞」の増殖促し筋肉の損傷や修復に関係します。故に成長ホルモンの減少は筋線維合成の低下に繋がります。
    栄養面では、加齢と共に素食になり1日に必要なタンパク質が不足しがちです。タンパク質は筋肉の元になる物質なので1日体重1kg当たり0.9gの摂取が推奨されています。(厚生労働省)
〈ココで整理〉「筋力」と「筋肉量」の違いわかりますか・・・?
「筋力」はどれだけ力を発揮できるか。「筋肉量」はどれだけ筋繊維が太いかの違いです。

筋力はは「火事場の馬鹿力」で表されるように単発で発揮できる力のことです。
筋肉量はマッチョな人の姿と捉えると分かりやすいでしょう。
筋力が低下すると「サルコペニア」状態に陥り日常生活に悪影響をきたします。自立生活を継続するには筋力は必要不可欠な要素です





     骨格筋の構造 出典:日経Gooday 10/28より


実は筋肉の質が最近問題視され始めました。筋肉の「質」は「筋力」に反映されます。例えばマッチョな人でもでも加齢と共に筋肉が機能低下し筋力が落ちます。

ダイナペニアが原因
         「ダイナペニア」が原因=加齢に伴い減少する筋質の低下(機能低下)のこと
大きな原因は以下の3つ
  • 筋肉の細胞間や、細胞の内部に脂肪がたまる(脂肪筋)
  • カルシウムイオンが減少し、収縮がうまくできなくなる(糖尿病の人)
  • 不要な物質を分解するオートファジー機能の衰え
筋線維の太さが細胞間に脂肪が蓄積し実質的にはやせ細ることがある。一見筋肉の大きさは変わらないが脂肪が入り込んでいる状態が「ダイナペニア」です。脂肪筋の状態を示します。

               異所性脂肪な状態。異所性脂肪は、細胞機能の低下を招きます。               ダイナペニアの図   出典:日経Gooday10月28日より
                  
筋肉細胞に脂肪が溜まると筋肉の質が落ち筋力低下と血糖値調整機能も低下するため糖尿病を促進させます。この異所性脂肪の原因は、主にエネルギーの摂取過多であり高脂肪食や運動不足に起因します。見た目の肥満で判断せず高血糖、高血圧、脂質異常症のうち2つ以上が当てはまる場合は筋力が低く筋肉の質の低下が起こる可能性が高くなります。
 順天堂大学のグループの研究結果から、筋肉に蓄積した脂肪を減らすには食事療法だけでは無く運動療法を加えることで促進されることが分かっています。脂肪の蓄積や糖尿病など加齢による影響は除去できませんが運動を行うことで筋肉の質の低下を抑制することは可能です。

どのような運動が効果的か・・・?
基礎知識として我々の持つ筋肉は「遅筋」と「速筋」に大別されます。遅筋は持久力が要求される有酸素運動などで使われ、速筋は瞬発力が要求される無酸素運動(筋肉トレーニング)で使われます。加齢と共に運動量が下がると筋線維は萎縮し細くなります。
高齢者は強い刺激の運動が減りがちで速筋線維が衰え遅筋線維が多くなります。即ち、日常動作における立ち上がる、階段を上る、転倒しかけたとき踏みとどまる力が減退します。
ゆえに年齢に関係なく速筋を鍛えるために強度を扱う運動を継続することが必須なのです。

「私は日々散歩しているから」「1万歩以上歩いているから大丈夫」と思っているあなた・・・それは間違った認識です。歩行には、主に遅筋線維が使われる=速筋線維の減退。もし歩くのであれば、散歩(ゆっくり歩く)ではなくHIIT(タバタ式トレーニング)をお勧めします。
とにかく速筋線維を増やすには筋肉に対して大きな刺激が必要なのです。
筋肉の質と量を保つためには、週2~3回の筋トレを含む週150分以上の運動が最低限必要です。

今まで多くの方に筋肉トレーニングをご指導している立場から助言させていただくと、「ながらトレーニング」は効果が少ないと思われます。歯を磨きながらのカーフレイズやスクワット・・など。
レジスタンストレーニング(筋肉トレーニング)をするなら時間を決めてしっかりと意識して行うことです。「よし、これからやるぞ!」と言ったポジティブな意識を持って始めることです。そして「こんなもんでいいかな」で止めないこと。これ以上は無理・・😢 まで行う努力が必要です。

自分の持つホメオスタシス(生体恒常性)を破らぬ限り筋肉は発達しません。いままで筋肉トレーニングをしてこなかった人が始めると2,3ヶ月の間は「筋肉が発達したような気分」になります。しかし、これは勘違い。衰えていた筋繊維が元の大きさまで戻っただけです。ここからがスタートです。
この状態(振り出しに戻った状態)からいかに発達させるかが重要なのです。

先ずは、定番の「スクワット」と「ランジ」から始めてみましょう。
できればスクワットは三種類こなせると良いでしょう。
ノーマルスクワット・ワイドスクワット・ナロースクワットです。
皆さん、頑張って!

                                  引用・参考文献:日経Gooday 10月の記事から