プロダクティブ・エイジングのお話し
Mar.2021 かきざわ整体院

 今回は、プロダクティブ・エイジング(健康寿命を延ばし、何歳になっても心身ともに元気で社会貢献し続ける)についてです。日経Goodayに掲載されたワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授の論稿を分かりやすくお届けします。

老化は生物の持つロバストネス(頑強性)の減少と崩壊です。加齢に伴い組織や臓器の状態が徐々に衰えシステムが弱まり脆弱になるのが老化です。人間を含め生物の老化の原因にはNADと呼ばれる抗老化物質がかかわっています。ヒトが生きる上で欠かせない体内物質の一つにNADがあります。このNADを増加させ、長寿遺伝子からつくられる酵素サーチュインを活性化させることが健康寿命の老化防止に繋がります。

☆Key Word:
①NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)抗老化物質。生命活動において不可欠な物質。
②NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)NMNが体内で分解され発生する長寿物質。
③サーチュイン遺伝子(SIRT1~SIRT7)遺伝子の転写制御に重要な役割を果たす酵素の1種。若返り遺伝子・長寿遺伝子とも呼ばれ、近年の研究では老化の防止やがんの発生の抑制など健康寿命の延長に繋がる結果が多く報告されています 。

抗老化成分であるNMNは、ビタミンB3(ナイアシン)から作られます。食品ではブロッコリー、アボカド、トマトなどに微量に含まれています。マウス実験では肥満を抑え、骨格筋、肝臓、脂肪など加齢に伴う遺伝子変化を抑制し身体活動量の増加、インスリンの感受性、網膜機能の保持、免疫細胞の数が増えるなどの抗老化作用があったと報告されています。他の研究機関の報告では、アルツハイマー病による記憶力や認知機能が回復し、海馬の細胞死の抑制が報告されています。

☆メカニズムは・・・
NMNは体内でNADに変換されサーチュイン遺伝子の働きを活性化させます。この中でもSIRT1(サーティワン)の活性化は、視床下部を働かせ臓器や骨格筋、脂肪組織の機能回復や身体活動量や代謝の増加に影響します。その他に血糖値を下げ、糖や脂肪の代謝を良くし、神経細胞を守り記憶や行動を制御します。その結果、老化や寿命のコントロールを活発にする作用があると考えられています。現実には組織中のNAD量は加齢と共に減少します。しかし、NMNの飲用によりNADを増加させることができます。

出典:日経Gooday 2021年2月1日の記事より

☆摂取するには・・・
NMNのサプリメントはかなり高価です。NMNはビタミンB3(ナイアシン)からつくられているのでナイアシンサプリメントで代用することが考えられますが容量を間違うと肝障害やインスリン分泌に影響する副作用の可能性が大きく要注意です。

☆それでは「NAD」量を増やす方法はないか・・・
あります「運動」です!
今井教授によると40~50代では運動により老化を遅らせることが証明されていると述べています。運動をすると筋肉中のNAMPT(ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ:体内でNADを合成するために必要な酵素)の量が上昇して、エネルギーの産生とサーチュインの活性化に不可欠なNADの量が増加します。
運動量は、ウオーキング、ジョギング、自転車こぎ、水泳などの軽~中程度の有酸素運動、筋肉トレーニングが効果的です。
日々多忙で運動機会が無い方も「忙しい」を理由にせず、多忙な日々でも「運動」を組み込んで積極的に運動を推進しましょう。言い訳して逃げないことです。今は良くても将来「フレイル」に陥る可能性を上げてしまいます。

〇「朝食」をしっかり摂取することもNAD量を増加させます。
NADの量は、体内時計(概日リズム)により増減します。昼は増加し夜間は減少します。NAD値を高めるためには、朝食をしっかり摂ることが大切です。教授によると、朝に良質のタンパク質を摂取することが重要と述べています。

☆ダイエットによる作用は・・・
カロリー制限は、老化を抑える効果がありますが同時に病原体に対する抵抗性が落ちるので注意が必要です。痩せていれば美しい訳ではありません。基準となるBMI値20を目標とすべきです。特に年齢と共に体力が減少し20以下になると肺炎や感染症、心臓病などの死亡リスクが上昇します。
日本人を対象にした疫学調査では、最も死亡率が低いBMIは女性が23.0~24.9、男性25.0~26.9で、ちょっと小太りのほうが長生きする可能性が高いといった結果もあります。
過度な制限は避けるべきですがこの理論に甘んじて食生活の制限を行わず過ごすと「肥満」になります。日常生活で食事の質や量を考えることは大切です。
健康な小太りを目指すのも良いかもしれません。

総括:朝食をしっかり摂り、昼間は仕事や運動をしっかり行う。そして夕食は遅くならない時間に軽めに食べて早めに就寝することが大切です。太陽の周期と自身の概日リズムを同期させ生体リズムを整えることが強いては老化防止に繋がります。